前回にも書いたように、この日の始まりは国分寺の山門前。前日宿泊した宿のご主人に車で送ってもらった。前日にここまで歩いてきてお参りしたからだ。この日は曇り。雨に比べれば天国。次は第十六番観音寺、30分ほどで着く。住宅地を歩いて抜ける。この辺りは徳島市中心への通勤圏内であろう。観音寺は住宅地に静かにあった。中に入ると本堂前で若かりし女性が読経している。菅笠を被っているので顔ははっきり分からない。若い女の子が一人でお遍路する姿は、今回初めて見た。バスお遍路ではなく、歩きお遍路に間違いない。大変な歩きお遍路をしてまで八十八ケ所にかける願いは何なのか、少し話せるチャンスがあれば声をかけてみたい。お作法を進めるが、段取りの悪い私は、いつものように手間取り時間がかかる。作法を終えた頃には若女お遍路の姿は神隠しにあっていた。次は、第十七番井戸寺だ。4、50分で行ける所だが、少し遠回りしてワークマンのショップに立ち寄るつもりだ。今履いている靴は、旅立つ前にアウトドアブランドのコロンビアで買ったものだ。トレッキングで防水の最新のものだ。しかし、雨の中での山登りでは足が靴の中で左右にずれて危ない。足首を隠す深いタイプでないのでしょうがないが、これからも山登りを要する寺では、と焼山寺の後に泊まった「すだち庵」の主人に相談したら、地下たびが良いと言う。自らも地下たびでお遍路したこともあり、今は底にクッションの付いたものもあるという。それを求めてのワークマンだ。結果、いいものはなかった。今の靴のままでヒモをもっとしっかり締めて、これでいくしかない。この靴の防水性はめちゃくちゃ高くて、ほとんど足は濡れないで済んでいるし、底のクッションがとても良く足へ与えるストレスが少ないからだ。10分ほどで井戸寺に着いた。大きなお寺だ。何か今日、式典があるようで、境内はその準備に追われていた。先程の若女お遍路の姿も見当たらない。お作法を済ませ、次へと向かう。
次は第十八番恩山寺。徳島市の中心を通って南に下る。約18キロ4時間強だ。街中をひたすら歩きながら郵便局を探した。何故なら、今担いでいる荷物が重く、このままだと早々にダウンするであろうから、昨晩、思い切って色んなものを自宅に送り返すことに決めたからだ。傘や野宿用に用意したシュラフカバー、着替え用のトレーニングウェアなど衣服、他に小物、とにかく荷物を最低限にするため送り返すものを決めた。途中、やっと郵便局を見つけ、駆け寄りその前に立ってショック。休みだ。そうか、今日は土曜日だ。すっかり曜日感覚は無くなっていた。このままだと、今の荷物の重さに耐えて、明日予定のふたつの山を越えないといけない。もう、いやだ! ネットで調べると徳島中央郵便局が営業している。また遠回りになるが行くしかない。中央郵便局に向かって歩き始めた。徳島市の中央を白衣姿で、そして背中で鐘を鳴らしながら歩を進める。JR徳島駅の前に来た。懐かしい。3年前に徳島市の「マチアソビ」を視察に来たのだ。駅前を過ぎ、中央郵便局に到着。不必要と決めたものを自宅に送った。窓口でその重さを聞いた。3.1kgだった。これで多分、荷物は10kgは切ったはずだ。嬉しい! 軽くなった荷物に感動しながら、次の寺、十八番恩山寺に向かう。途中、十九番の立江寺の宿坊に連絡したが、当日の予約は受けられませんと断られた。しょうがなく立江寺近くのお遍路宿「鮒の里」に連絡して予約。道のりは長い。中央郵便局に立ち寄ったおかげで、恩山寺までは20キロ近くはある。足がきつい。南北を走る幹線道路をひたすら歩く。徳島市中心から市外に向かって右側を歩いていると車の販売店などが続く。食べ物店はみんな反対側、郊外に向かう側にある。そうか、市内中心に向かう車は、市内に入ってから食べようと思うから、この辺りでは外食しないんだ。逆に市内の人が目的を持って食べに行くから市内中心を背に左側に外食店が立ち並ぶのだ、などと考え、とにかく私が昼食を食べるためには道路を渡って反対車線側に行かないとダメだ。しかし、ずっと横断歩道がない。そうこうしてるとインドのチキンカレー専門店があったので、そこで昼食をとった。
もうしばらく幹線道路を歩き、少ししてから住宅地に入った。歩いていると中学生らしき子供が3人、自転車に乗って私を追い越しざまに、こんにちはと挨拶してきた。お遍路さんへの挨拶だ。嬉しかった。市の中心では、誰も挨拶はなかった。恩山寺は800mほど曲がった坂道を上がったところにあった。古い立派なお寺だ。お作法を終えて、続いて立江寺に向かった。住宅地を歩き、立江川に出て、川に沿って寺に向かった。立江寺は地元に根づいた、民衆からきっと愛され続ける上品な寺と感じた。1日早く宿坊を予約しておけば泊まることが出来たのにと思うと、残念さが増した。作法を済ませ、今きた道を引き返し、立江川沿いを歩いて今日の宿、鮒の里に到着。不動産業を営んでいたご主人が自ら作った家だけに、広々とした気持ちの良い作りになっていた。お風呂は横になって入られるタイプで、これには感動した。陽の射した、たっぷり湯をためておいてくれた湯船につかり、疲れを取った。湯から上がり、宿のご主人と話しながら夕食。夕食はさっきの立江寺からの帰りにコンビニで買ってきた。もちろんお酒も。話の中でご主人の先祖が札所巡りをしていて、大正時代、そしてなんと江戸時代の時のご朱印帳があると聞き、見せてもらった。すごい、みんなきっと歩き遍路だろうし、同じことを今、私もやっている。感動。今日の宿泊者は私一人、静かにくつろげた。
今日の歩行距離は32127m,歩数は45903歩、疲れた。
遍路さんは目立ちますね。愛されてる素晴らしいです。そして、気をつけてください。