12日:いよいよ、八十八ヶ所中最も厳しいと言われている山上にある寺、十二番焼山寺に向かう。外は朝から雨。ポンチョ姿でスタート。昨晩、宿でお話しした他のお遍路さんは皆もう出かけたあと。宿のご主人に聞くと、私が全宿泊者の中で最後のようだ。どうも私は思った以上に愚図なのかも知れないと思った。普段登山していても思う。いよいよの登山開始で準備完了が最後になってしまう。途中アイゼンを付ける時などもそうだ。急がないと雨の山道、誰とも会えないとなると道が不安だ。昨日お参りした藤井寺の脇から登山道は始まる。登ると直ぐに別れ道がある。こちらかなと思い入った道は、どうも落葉の踏まれたあとがなさそうでフワフワしてる。5、6分歩き、引き返す。別の道を進むと、そこに後から人が登ってくる。他の宿にしゆくはくされた方だ。こちらでいいですかね、と尋ねると「四国のみち」の看板があったからいいのでは、という。そうか、あの看板はお遍路道を指しているんだ、今更ながらに気づく。やはり愚図かも。もう一人が一緒なら心強い、と話をしながら進む。どんどん高く、深く進む。途中、一瞬だけ北に開けた所があり、そこから吉野川市の町が眼下に見えた。
それ以降は山の裏側にまで入り、たまに見えるのは靄のかかった山々ばかり。足下では頻繁にカニが動く。サワガニが山道で何かエサになるものを探しているのだろう。それにしても長い、まだまだのようだ。全長約13キロの山道、疲れる。と、下りが始まった。同行の方は下りで時間を稼ぎます、と急ぎ足で先へ行った。私は転びたくなく、ゆっくりと慎重に歩んだ。急な登りを「遍路ころがし」と呼ぶようですが、下りも同じなので、私は転がされたくなかった。途中の休憩場所で昨日会っおばさんと会う。今回15回目のお遍路とのこと、驚きです。でも、お遍路はリピーターが多く、宿泊先でも60%とはリピーターと聞きました。相当高度を下げたところでとても急な登りが始まった。いや〜きつい登りだ。淡々とマイペースで登り、登り切った。雨は降り続いており、頭はもうびっしょり。灯籠が見えた、寺だ。疲れて重くなった足で長い参道を進み、やっと山門に到着。
焼山寺、立派な寺だ。こんな山上だったらと想像していた寺ではなく、敷地面積も建造物もすごく立派な寺でした。境内に敷かれた深いじゃり、こんな深いのは初めてで、雨の中お作法のためあちこち動くのが大変でした。納経所で御朱印をいただき、そこで朝、宿の方が持たせてくれたオニギリで昼ご飯。先程先を急いだ方は寺にほぼ同時に着いたようで、その方と一緒に下山しました。途中、一度道を間違えそうになったこともあり、2人でもほんとに道標に注意しなければダメだと登山の常識を再認識しました。また、私は二度山道の石の上で足を滑らせて転び、「遍路ころがし」になりました。下山し、私は宿泊先の「すだち庵」に、もう一人の方はもう一山登って下りた所にある宿泊先へと別れました。すだち庵も遍路宿で、先ずはお風呂に行きましょうということで、車で近くの神山温泉のスパに向かいました。雨に打たれ続けてきた身体を熱いお湯は優しく温かく迎えてくれました。宿に戻ると、やはり一杯飲みたくなります。ご主人は、ではと鰹のタタキを出してくれ、本日の宿泊者は私一人しかいなこともあり、一緒に飲んでいただきました。アニメやゲームの話に盛り上がり、酒は進み、とても楽しかった。山道の遍路は緊張するので、体だけでなく心の休めも必要ですね。リラックス、リラックス。
3日目、歩行距離22544m、歩数32214歩、長かった5時間半の登り