13日:翌日も雨。しかも、天気予報では雨量が増すという。今日は山を登り、そして下山、そして川沿いの道をひたすら歩く予定。雨がひどいなら、まあ一泊ここでステイもありかなと悩んだ結果、行くことにしました。宿のご主人から登り始めで見落としやすい脇道への入り口があるのでと注意を受けて出発。さて、その箇所を気にしながら歩き始めたものの、その脇道への入口が分からずご主人に電話して、リモートガイドで無事、道を見つけて登山続行。雨の中、一人で登る山はやはり緊張する。お遍路マークを見落とさないように注意した。お遍路道には時々、道の脇に石仏というのか地蔵というのかがある。特に焼山寺への道にはたくさんあった。それがあると道を間違っていないと安心するのだ。仏さんがくれる安心、同行二人のお大師さんの心尽しのように思える。出発して1時間半ほどで玉ヶ峠に着いた。ホッとした。あとは舗装された道を地図をしっかり見ながら、お遍路マークも見逃さないようにして、降り止まない雨の中歩く。また、今日も誰ともすれ違わない一人歩き。途中、お遍路さん休暇所と書かれた所があり、そこで休憩。誰か来るかなと思いましたが、誰も現れず。この雨の中、なかなか歩く人はいないよね。やっと、眼下に川が見えてきた。あの川まで降りれば、あとは川沿いの道だ。
鮎喰川に到着。郵便局を左に見て阿川の町を歩き始める。あ、やっと人と会えた。と思いきや、近寄ると、ガードマン? 警察官?の等身大の人形だ。なんだ、と思いながら歩くと今度はお遍路の親子が道端の椅子に腰掛けているではないか、これも人形。変な町だなと思いながら歩くと、ビックリ! 今度は広場に、思い思いにくつろぐ大勢の町の人がいる。すべて人形。これはもう個人の趣味ではなく、町としての企画なんだ。町の芸術祭とかやってるのかな? お遍路道に入って川と離れ、しばらく歩くとまた、川沿い近くに戻ってきた。農作業をしているおばさんがいた。雨の中大変ですね、と声をかけようとしてまたもやビックリ! これも人形。本物の軽耕運機を持たしてる懲りよう、まいりました。こちらは朝から誰とも会わず、話してもいないんだから、声かけたくなるのもしょうがない。
ああ、次のお寺まであと10キロはある。ポンチョ姿で雨に打たれながら、車が行き交う川沿いの道路を黙々と歩く。ポンチョを被っていると背中の登山リュックに付けた鐘も鳴らない。この鐘は安楽寺で買ったもの。他のお遍路さんが付けていて、とても綺麗な音色が気になっていたので買った。「同行二人」を感じるかなとの思いもあった。その鐘もポンチョで鳴らないので、孤独な時間です。
十三番大日寺に近づいて来て、街並みが変わってきた。と、左に食堂を発見。うどんと書かれた旗もある。いかにも町の食堂という感じ。先日の手打ちうどんの美味しかった記憶が新しく、昼食を食べていなかったこともあり、吸い込まれるように店に入った。カウンター席には常連さんらしき客が二人いた。私もカウンターに座り、メニューを探すが無い。カウンターの向こうのおばさんご主人が、そっちにおかずがあるよ、と言う。ガラスケースを覗くと、2種類のおかずが並んでいる。私は鳥カツを選んでカウンター席に戻り、うどんを頼んだ。うどんは「かけ」だよと言われて、頷く。鳥カツ、美味しい。ふたきれ食べたところでうどんの登場。「かけ」だからなと思いきや、たっぷりの天かすと万能ネギとかつお節、そして小さな揚げが入っている。美味しそう、見ただけで分かる。汁をすする、美味い! こんな美味しいかけうどんがあるだろうか。しかも300円。入ってる具というか薬味が、これまた絶妙。おばさんとお寺の話をたっぷりとし、話しに満足、腹も満足で、食堂を後にした。あともう少しだ、残りの距離を頑張る。大日寺に着き、お作法を雨の中やり、予約していた近くの宿、名西旅館花に入って荷物を預けた。必要なものだけ持ち直ぐに宿を出て、十四番常楽寺と十五番国分寺に向かった。3、40分で行ける近さだが、足が辛い。こけないよう注意して歩き、お参りを済ませ、宿に戻る。直ぐに風呂に入って生き返った。丸一日雨に打たれ続けるのも辛いものだ。翌日、出かける際に宿のご主人に十五番国分寺まで車に乗せてもらった。ここから次に向かう。お遍路宿で「車の送迎あり」とは、こういうサービスのことを指し、お遍路さんに無駄ない行程で済むよう配慮しているのだということを知った。そして、最後別れ際、ご主人の言った言葉も嬉しかった。「頑張ったらあかんよ、頑張ったら、先は長いやんからね」、ありがたいお言葉です。
4日目の歩行距離は27900m、歩数は39869歩 1日雨に打たれるのは疲れる